スーツケース

賀詞交換会の翌日、帰路途中の新幹線で記す。
昨日、東京へ向かう新幹線の中の出来事だ。
私は3列座席の通路側に座り、中席は空席、窓側座席には若い女性がスーツケースを横向きに膝の前に置いて座っていた。ただスーツケースは車輪が床面に着いてガラガラと左右に動き不安定な状態であった。
小田原の辺りでカーブがキツかったのだろう、彼女のスーツケースが突然通路側へ走り出した。偶々、膝を折り畳むように座っていた私の膝前を猛スピードで素通りして通路を横断した。加速したスーツケースは2列座席に座る若い男性の脚部に衝突した。
普通ならば加速する前に私の脚に当たり、食い止めれる所だろうが、サッカーのスルーパスかのように、見事なほどに素通りしたスーツケースが突然衝突したのだった。男性はビックリしたことであろう、目をパチクリさせていた。それはそうだ、経緯が全く分からないことであろう。
さて若い女性とは言うと暫くその事象に気が付かなかった。そして思わず私は笑ってしまった。ふと女性がスマホから目を離して前を見ると膝の前に有るはずのスーツケースが突然掻き消えてしまったかのように『ない!ない!』とばかりに焦って当たりを見回したからだ。
そして女性が事実を知ると男性に詫びてスーツケースを受け取った。女性は細面で美人であった。やはり美人は得である。男性はデレっとした表情で謝罪を穏やかに了承した。
女性も学習する能力はあるようで彼女はスーツケースを側面に設置して再発を防止した。それをもっと早くすれば未然に防げたのだ。今回、衝突したのが偶々若い男性だったから何事もなく過ごせた。男性がもし幼児だったら?老人だったら?妊婦だったら?歩行中に衝突した歩行者が他の座席に倒れて二次災害を招いたら? それは大変なことになったことであろう。要は女性は無神経であった。私は無神経はダメだと常に道場生に戒めている。無神経に対義するのは気配りである。気配りは合気道だけでなく、凡ゆる武道通じる。
新幹線にスーツケースを持ち込む人が以前よりも増えたと思う。東京オリンピックが近づき更に増えることであろう。
危険の起因を察知する。日常に武道の力量が問われることであろうと思う。